夢見る人間の魔法使い 編曲秘話&解説
ご挨拶
皆さんこんにちは。はじめましての方ははじめまして。前年度演奏会担当兼魔理沙メドレー編曲者の社長代理です。
長らくお待たせいたしました。第 98 回五月祭「心を駆動する。」 において開催しました東方オンリー演奏会「博麗幻奏之儀弐拾漆部」内で披露いたしました、魔理沙メドレーこと「夢見る人間の魔法使い」の編曲秘話&解説記事です!
まずはこの場をお借りして、博麗幻奏之儀弐拾漆部にお越しくださった皆様に感謝申し上げます。そしてこの壮大なメドレーを一緒に作り上げてくださった奏者の部員のみんなもありがとうございました。さらに、前日の依頼にもかかわらず録音と録画をお引き受けいただいた OB の宮燐さん、ありがとうございました。
編曲秘話
どうして 13 曲もの原曲を使ったのか、どうしてこんなにも編成が大きくなったのか、先に編曲の裏話からお話します。
きっかけ
正式なログがないため詳細な年月日は不明ですが、直接的なきっかけは去年の駒場祭の 1 か月前ごろに naoppy さんがピアノ(キーボード)を始めようと「星の器 ~ Casket of Star」を練習していたことです。私も星の器をどうしても弾きたかった上に、もともと魔理沙のテーマ曲を集めてメドレーを作ろうという野望はあったので、それならもう五月祭で作ってしまおうと思いました。
もともと魔理沙のテーマ曲が多いことに関心があり、一時期旧作曲にかぶれて星の器や「Dim. Dream」、「Tabula rasa ~ 空白少女」、そして「東方妖恋談」に「不思議の国のアリス」あたりをよく聴いていました(が、まだまだ未開拓の曲が多いのも事実です)。そしてよく部室では星の器に「オリエンタルダークフライト」、「メイガスナイト」を弾いていました。これだけ条件が整ってしまったのでやるしかなかったわけです(笑)。
編成について
初期の編成
十重奏なんて人生で一度も書いたことがなかった(そりゃそうだ)ので、内心不安でしたが、正直なところいろいろな楽器が使えるというワクワクのほうが大きかったです。
当初の編成は以下のメンバーと楽器を想定していました(敬称略)。
- Fl.:いおいお
- 1stTrp.:りんご
- 2ndTrp.:ATP
- 1stVn.:ゆーり
- 2ndVn.:ドナウの人
- Va.:社長代理
- Ba.:うーはいうぇい
- Dr.:SKK
- 1stPf.:時丸
- 2ndPf.:naoppy
GUT で楽器デビューした人や、もともと楽器を嗜んでいた人に大学から楽器を始めた人、オケでバリバリ弾いてる人まで、多種多様な音楽バックグラウンドを持つ人が集まりました。
ここで私が GUT で演奏する曲を編曲しているときに意識していることを書いておきます。奏者を思いやった楽譜を書くこと。これは原曲を再現するよりも優先されるべきことだと考えています。何よりも楽しく演奏するためには、ある程度弾け/吹け/叩けないといけない。そのためにも無理のない楽譜を書く。今回はかなりバランスを取る必要があり大変でしたが、その分かなり編曲のし甲斐がありました。
こうして 10 人で始まった前代未聞の合奏企画でしたが、最終的には 12 人に……!? 何があったのでしょう?
新入生を迎えてから
編成が大きく動いたのは 4 月に新入生を迎えてからです。なんと 1 年生でオーボエが吹ける子がいるというのです。ガッツポーズ出ました(笑)。本当は彼の推し曲である始原のビートをやりたかったのですが、別サークルが忙しかった私にそんな時間はありませんでした(泣)。というわけで魔理沙メドレーに少し手を加えてオーボエパートが増えました。やっふるくん本当にありがとう。
次にドラムについて。企画を立ち上げたタイミングではもともと時間があったので SKK にドラムを 1 から始めてもらう予定でした。が、本人もかなり忙しく、前回・前々回の演奏会と同じくタンバリンで参加する形になりました。すると星の器のドラムソロはどうなるんだ……と頭を抱えていたところ、なんといおいおさんの後輩にドラムを叩ける東方有識者がいると聞き、参加してもらうことになりました。ありがとう、エナガさん。
全て合わせて 12 人。最終的な編成が確定しました。
- Fl.:いおいお
- Ob.:やっふる
- 1stTrp.:りんご
- 2ndTrp.:ATP
- 1stVn.:ゆーり
- 2ndVn.:ドナウの人
- Va.:社長代理
- Ba.:うーはいうぇい
- Dr.:エナガ
- Tamb.:SKK
- 1stPf.:時丸
- 2ndPf.:naoppy
使用原曲について
使った原曲 13 曲
いよいよ本当にお待たせしました。使用原曲を発表します。
- 魔法使いの憂鬱
- コレクターの憂鬱な午後
- 魔獣スクランブル
- 星の器 ~ Casket of Star
- Dim. Dream
- アリスマエステラ
- 恋色マスタースパーク(恋色マジック)
- オリエンタルダークフライト
- Selene’s light
- 100 回目のブラックマーケット
- ひもろぎ、むらさきにもえ
- メイガスナイト
- 魔女達の舞踏会 ~ Magus
この 13 曲を 10 分弱にねじこみました。ちなみにメドレー内での登場順で並んでいます。そして「恋色マジック」については、マスパと同一視して 1 曲カウントにさせていただきました。魔梨沙ファンの方、申し訳ございません。ひもろぎ入れてるので許してください。
選定基準
これらの選定基準ですが、魔理沙のテーマ曲は言うまでもないので割愛します。その他の曲についての選曲理由は以下をご覧ください。
- 魔法使いの憂鬱……The Grimoire of Marisaの付属 CD 収録曲。これが魔理沙に関係していないとは誰にも言わせません。
- コレクターの憂鬱な午後・100 回目のブラックマーケット……魔理沙が主人公のゲーム、バレットフィリア達の闇市場の曲だから。あと私が大好きだから。実はブラックマーケットは耳コピ動画をニコニコに上げてます(小声)。
- アリスマエステラ・ひもろぎ、むらさきにもえ……魔理沙がボスの面の道中曲。あと後者は私が好きだから。
- Selene’s light……自機に魔理沙を選択した時に流れる道中曲。あとなんか重ねたらいい感じだったから。
というわけで、基本的に私がやりたい放題やってます(笑)。編曲者特権。
演奏会中に呼びかけた #GUT 魔理沙メドレー のハッシュタグ投稿について
さて、演奏会を聴きに来てくださった方は覚えていると思いますが、私が演奏前に Twitter での投稿を呼びかけました。タグを使ってツイートしてくださった方々、ありがとうございました! 本当にニヤニヤしながら閲覧させていただきました(笑)。メインを張っていた曲はかなり正答率がよかったのですが、コレクターの憂鬱な午後やひもろぎ、むらさきにもえ、アリスマエステラは正解者がいませんでした……(※GUT 内部生が回答したアリスマエステラはカウントしておりません)。この 3 曲は結構わかりやすく入れたつもりだったのですが……。このあたりも以下の解説で詳しく見ていきます。にしても Selene’s light わかった人すごいです、、
メドレー解説
続きましてはいよいよメドレーの組み立て方解説です。どのように編曲を進めたかに加え、実際の譜面画像とともにめちゃくちゃ詳しく解説していきます!
と、その前に、まずは本番の録音をお聴きいただきましょう。
メドレー全体の構造
このメドレーは 6 つの部分と終結部からできており、それぞれの部分を順に解説します。
① 魔法使いの憂鬱・コレクターの憂鬱な午後
録音:0:00 ~ 1:04
曲の冒頭を飾るのは「魔法使いの憂鬱」です。開幕のピアノによる導入の後、変ホ短調のしっとりとしたのびやかなメロディーがフルートと 2nd ヴァイオリンにより奏でられます。このメロディーと一緒に 1st ヴァイオリンは、変ホ短調に合わせてわずかに改変した「コレクターの憂鬱な午後」の旋律を奏でます(譜例 1)。どちらも曲名に憂鬱が入っているので重ねてみたところ、予想以上に相性が良かったです。
トランジションではトランペットを含む全ての楽器が入り、だんだん音量が大きく、テンポが速くなっていき、原曲にもある風変わりな転調を遂げて次の「魔獣スクランブル」へと突入します(譜例 2)。
② 魔獣スクランブル
録音:1:04 ~ 2:05
続きましては「魔獣スクランブル」です。このゾーンはうまく組み合わせられる他の曲がなかったのと、この 1 曲だけで十分豊かな厚みが出せると判断したため、魔獣スクランブル単独としました。
ここはメロディー楽器が次々と移り変わっていきます。冒頭の華やかな出だしは 1st ヴァイオリン・フルート・トランペット・ピアノが、続く鋭めのメロディーは 2nd ヴァイオリン・ヴィオラ・ピアノが、そして流れるように綺麗なメロディーはフルート・オーボエ・ピアノが演奏しています。
割と全体的に原曲そのままなので次の部分です。トランジションは減七の和音を用いてがらりと変えてみました。
③ 星の器・Dim. Dream・アリスマエステラ
録音:2:05 ~ 3:21
星の器はカッコいいのでトランペットに吹いてもらいました。もちろん、もともと弾きたいと言っていた naoppy さん担当のピアノの下パートにも弾いてもらいました。
序奏が終わったのち、ついに「Dim. Dream」が登場します(譜例 3)。が、ヴァイオリン 2 本だけだったのでかなり聴き取るのは難しかったと思います。
静かなゾーンを経たのち、カッコいいドラムソロ(譜例 4)の直後にカオスです。これは後で練習秘話にも書くのですが、さすがに難解な編曲をしてしまいました……。ここはどうなっているかというと、最初の嬰ヘ短調の 8 小節では、フルートとオーボエとピアノが「アリスマエステラ」のメロディー、ヴァイオリン 2 本で星の器のメロディー、ピアノの下とベースでアリスマエステラのベースパートをやっています(譜例 5)。そして次のト短調の 8 小節では、星の器とアリスマエステラのメロディーはそのままに、ベースとヴィオラがアリスマエステラの別部分のメロディーをやり始めます(譜例 6)。原曲では重なっていない部分を無理やり重ねました。
トランジションはすっきりと「恋色マスタースパーク」につながるように、ヘ短調の属七の和音をいい感じに挟みました。
④ 恋色マスタースパーク・オリエンタルダークフライト・Selene’s light
録音:3:21 ~ 4:30
皆さんお待ちかねの「恋色マスタースパーク」です。東方の曲で 1,2 を争う有名な動機をノリノリで奏でた後、少し静かなゾーンに入ります。このあたりは原曲通りなので特筆するところはありませんが、1st ヴァイオリンが「ラ ♭ シ ♭ ド~」と入って雰囲気が変わると、何やら 2nd ヴァイオリンが意味深な動きをし始めます。実はこれは「オリエンタルダークフライト」のメロディーをかなり改変したものになっています(譜例 7)。
いよいよサビに突入すると、なんと三声部に分かれます。フルート・1st トランペット・1st ヴァイオリン・1st ピアノによる「恋色マスタースパーク」、オーボエ・2nd トランペット・2nd ヴァイオリンによるオリエンタルダークフライト、ヴィオラ・エレキベース・2nd ピアノによる「Selene’s light」です(譜例 8)。これらの 3 曲にはある共通点があります。よくお聴きいただければわかると思いますが、なんと、全てフレーズがファ ♯ ソ ♯ ラから始まります。たったそれだけなのですが、メロディーをそのまま重ねてみたら予想以上にうまくハマったので採用しました。この部分に関してはメロディーに手を加えていません。
さて、皆さんは最後にメロディーが半音下がったことに違和感を覚えたでしょうか? もし違和感がない場合はある曲の影響が強いんじゃないでしょうか? その曲こそ私が参考にしたが使用原曲には含めなかった、いわば 14 曲目の原曲です。それは……「風神少女」です! あの曲は途中で盛り上がり半音上行して嬰ヘ短調になりますが、また最初に戻るためにメロディーが増 8 度下降してヘ短調になります。その部分をリスペクトしました(譜例 9&譜例 10)。
トランジションについてですが、私の完全オリジナルです。メロディーの最後を半音下げてヘ短調にし、次のニ短調につなぐために一時的にヘ長調の音階を挟みました。その結果フェルマータだらけのとんでもない小節が爆誕しました ☆
⑤100 回目のブラックマーケット・ひもろぎ、むらさきにもえ
録音:4:30 ~ 6:02
このゾーンには魔理沙のテーマ曲が 1 曲もありません。しかし、私が好きなこの 2 曲をどうしても加えたかったのと、「100 回目のブラックマーケット」がボス直前道中曲でメインを張るに値すると判断したため、こういった組み合わせになりました。「恋色マスタースパーク」の盛り上がりが終わったあと、少しクールダウンして聴こえてきたのはピアノ独奏の「100 回目のブラックマーケット」です。メロディーが受け渡されつつだんだん盛り上がり、サビに突入します。2 回目のサビからヴィオラが 8 分音符で刻み始めるのですが、こちらは実はひもろぎの旋律を加工したものになっています(譜例 11)。ブラックマーケットのサビが終わると、その旋律を導入として一気に楽器数が減り、ひもろぎ冒頭の 3:3:3:3:2:2 の緊張感あるリズムパターンが登場します。原曲と調性が違ったのでわかりづらかったでしょうか? ひもろぎ冒頭の旋律をフルートに吹いてもらい、さらに不思議な転調を遂げて曲がだんだん遅くなっていって……。
⑥ メイガスナイト・魔女達の舞踏会
録音:6:02 ~ 8:17
冒頭はパートを最大限絞りました。「メイガスナイト」の曲調にふさわしい、ずいぶん怪しげな幕開けになったのではないかと思います。「メイガスナイト」に独特な、すごい音のスネア?をフルートにやってもらうことを思いついた自分をほめてあげたいです。
A メロに入ったところからはエセ弦楽四重奏(チェロの代わりにベース)ゾーンが始まります。ここまでしっかり音量を絞ったところで、楽器が格段に増えて曲が盛り上がります。クレッシェンドを経て、全パートによる強奏となります(譜例 12)。この部分はまた後で触れることとします。
今までのホ短調から嬰ハ短調に転調して A メロが再現された後は、原曲通りサビに突入です。ここで「魔女達の舞踏会」が登場します(譜例 13)。ここ、皆さんは分かりましたか? 「メイガスナイト」の原曲の割にはコードがかなり違ったり、メロディーもかなりかけ離れていたりと、組み合わせるのに意外と苦労しました。奏者全員、ノリノリで演奏していてよかったです。
転調後は一旦全員「メイガスナイト」に集合しますが、途中からシームレスに一部のパートが再び「魔女達の舞踏会」に移行します。盛り上がりが最高潮に達し、ヴァイオリンとフルートが特大のリタルダンドをかけて……
⑦ 終結部(コーダ)
録音:8:17 ~最後
最後はまた「魔法使いの憂鬱」です。冒頭の伏線を回収する展開、皆さんは当然お好きですよね(圧)
ぶっちゃけた話をすると幻想郷世界 Ⅱの影響が大きいのかなーと思ってます。あの曲、「宇宙巫女現る」から始まって 100 曲使った後に「宇宙巫女現る」で終わるんです。この話は後でもう一度します。
曲の冒頭でまだ使っていなかった、「魔法使いの憂鬱」のフレーズを持ってきました。原曲通りなら半音上行してホ短調に転調するのですが、わざわざ転調をさせるほど尺を長くするのもくどいと思ったのでそのまま変ホ短調で終結させました。
曲順の決め方
私の思考プロセスをざっくりまとめるとこんな感じです。各部分でメインを張る原曲を決め、その雰囲気の盛り上がり、落ち着きがいい感じになるように順番を決めました。そしてメインとなる原曲にメロディーを合わせられる原曲をどんどん増やしていき、最終的な使用原曲とその順番が決まりました。
これだけではわからないと思うのでもう少し補足します。各部分のメインとなる原曲の順番については、私の秘封曲順理論がもとになっています。詳しくは合同誌 21 もしくは私のアドカレの記事をご参照ください。メドレーでは前半の盛り上がりがかなり長くて、星の器とマスパに対応しています。ブラックマーケットとひもろぎを挟んで後半は言うまでもなくメイガスで盛り上がります。
曲の重ね方については完全に思いつきです。名前が似ているという理由で無理やり工夫することもあれば、単純にメロディーが似ているから重ねるときもあります。この 2 つの事例に該当しないのが今回のアリスマエステラですが、こちらは適当に原曲聴いていたらなんか重なった、という感じです(何の説明にもなっていない)。
なぜ原曲のメロディーを重ねるのか
さて、この曲の編曲中にとある質問(私がわかりやすく改変しました)が奏者からありました。
「そんなに原曲を増やしたら聴衆が聴き取れなくなるのではないか」
その通りです。かなり痛いところを突かれました。実際聴衆の皆さんで全て聴き取れた人はいなかったわけですから……。
ぶっちゃけると自己満なんですが、多声部の音楽のすばらしさに気づいてほしい、という思いがあります。普段オーケストラでクラシックを演奏している身として多声部音楽が当たり前であり、それぞれの声部が対等に聴こえると上手く説明できない面白味があるんですよね。
聴き手に良さを届けたいのもありますが、奏者にもそれを汲み取ってほしいという想いもあります。GUT の演奏会に参加する人たちは様々な音楽的背景を持つ人です。そうしたみんなにも技巧を凝らした響きの美しい楽譜を、その良さが伝わるように演奏する喜びを知ってほしいと思っています。
あとは東方という一人の作曲家が作り上げた多くの音楽に共通性を見出すのが楽しいから、というのもあります。人が作曲している以上、手癖というものがあります。神主の手癖だったり作風の変化だったりに、編曲することで気づけるのが面白いです。
これらに気づいたのは、幻オケへの参加がきっかけだったと思います。もともと原曲を再現とまではいかずとも、近い形で楽しく演奏できたらいいな、と思って東方アレンジに手を出しました。しかし幻オケで演奏した曲を通じて、複数の原曲を用いたアレンジの面白さ、そして大胆な曲調の改変の可能性に触れ、だんだん考えが変わりました。現在、GUT の演奏会で私が編曲し演奏した曲に関しては相変わらず原曲の再現を目指していますが、別のところで 2 曲を混ぜたアレンジの追求をしています。
そんな私に深い影響を与えた幻オケについては、合同誌 22 の私の記事をお読みいただくか、YouTube とニコニコ両方に上がっている 80 分にも及ぶ原曲 100 曲メドレーの『幻想郷世界 Ⅱ』(できれば『幻想郷世界』やその他の作品も!)をお時間があれば一度は聴いていただきたいです。
練習・本番秘話
さて、少し自分語りをしてしまいましたが、話を戻して練習や本番の裏話をします。
合奏が難しかった部分
① 魔獣スクランブルの木管&ピアノメロディー
譜例 14 にあるメロディーですが、原曲を聴きこまないとかなりリズムが難しく、練習中に拍が伸びて苦戦しました。全体を見ると 4 拍子のままなのですが、8 分音符 1 つ少ないところと多いところがあり、かなりの正確性が要求されました。
実は難しいのはメロディーだけでなく、裏の伴奏もです。伴奏形のリズムがメロディーに合わせて複雑になっていたんです。うまく噛み合っていたでしょうか……?
② 星の器ドラムソロ直後
ドラムが練習に参加する前は自分が指示を出していたため、ヴァイオリンがスムーズに入れていました。しかし譜例 4 の通り、ドラムの入りがとんでもないところ(これは原曲が悪い)にあるので、拍感がつかみづらくこちらも苦戦しました。さらに後続は譜例 5 にある通り、3 声部に分かれるため尚更難易度が上がってしまいました。
実は本番で最悪の事態になったら私が弓で指揮を振ることにしていたのですが、その必要はなくなんとか崩壊は免れてほっとしました。
③ メイガスナイト強奏
既に上げました譜例 12 のところです。練習中に私は便宜上音ゲーゾーンと呼んでいました。多分原曲通りのリズムなのですが、1 回目と 2 回目で 8 分音符ずれていたり、ベースとピアノの下は別の事をやっていたり、一部不協和和音だから音程をうまく聴かせるのが難しかったり、練習中誰もうまくいってるかわからなかったり……本当に苦労しました。
新学期
新年度に入り、GUT の新歓イベントを終えて奏者が奇跡的に増えたのは良かったのですが、大人数すぎてみんなの予定が合わない……と思っていた矢先、五月祭の少し前にたまたま全員が揃える日がありました!! 一名遅刻が発生しましたが、とても有意義な練習になって本番が楽しみになりました。
と、ただの日記になってしまいましたが、12 人全員揃ったのは本当に奇跡だと思います。
本番
電子ドラムの音
さて、本番を聴きに来てくださった方はこう思いませんでしたか?「ドラムが大きい」と。私は冒頭のドラムに違和感を覚えました。響き的にオープンハイハットとクローズドハイハットの配線を間違えたのだろうと思ってかなり悔しかったのですが、演奏後の片付け中に別の奏者が確認したところ問題はなかったそうです。決して奏者のせいではないので何があったのか疑問です……。
余談:紅楼
今年もやらかしました、アンコール紅楼の話です。昨年度の駒場祭から連続で聴きに来てくださった方はご存知だと思いますが、前回は前日の夜に楽譜を投げてぶっつけ本番で合わせるということをしでかし(詳しくはこちらの記事をご参照ください)、今回は楽譜こそちょっと前に出来上がったものの、リハをやる時間がなくまたぶっつけ本番になってしまいました。本当にすみませんでした。三度目の正直……と行きたいところです……。
最後に
今後の編曲展望
霊夢メドレーは作るのか
結論から言うと、直近で作るつもりはありません。私の代わりに作ってくれる GUT の方がいたらお願いします。現状霊夢のテーマ曲で弾きたいのが「春色小径 ~ Colorful Path」だけでして、さらに「世界は可愛く出来ている」は弐拾肆部にて演奏済みなので、わざわざメドレーを書くモチベーションがない、というのが正直なところです。もしかしたら卒業前に忘れ物の回収で作るかもしれませんが。
駒場祭で演奏する曲の予定
駒場祭では昨年同様いろいろな曲を扱おうと思っております。現在では「天空の花の都」、「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」、「宇宙を飛ぶ不思議な巫女」、「永遠の春夢」、「不思議なお祓い棒」、「有機体全てのメメント ~ Memory of Fossil Energy.」を予定しております。この前の春例で頒布しました合同誌には宇宙メドレーをやります、と書いたのですが、それはまた来年の五月祭のお楽しみということにさせてください。
作りたいメドレー
基本的に自分の原曲の好みのままにやっているのですが、春例の合同誌に予告した宇宙メドレーはもちろん、秘封アルバムを 1 つ丸ごとそのまま取り上げたメドレーや地霊殿メドレーなんかも作ってみたいなーと思っております。もうしばらく私の編曲にお付き合いいただけると幸いです。
最後のご挨拶
めちゃくちゃ長い記事となってしまいましたが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。別サークルが忙しすぎて記事を出すのが五月祭 2 か月後というとんでもないことになってしまいましたが、その分熟成されていい感じになっているのではないでしょうか(白目)。
今回とんでもない人数の合奏(演奏時間においては私の知る限りうみねこさんのナイト・オブ・ナイツが最長だと思われます)を企画してみて、GUT の演奏会に出る人の層が本当に広がったなあと思います(広げた張本人は私なわけですが……)。私の企画だけでなく曲目も充実してきて、演奏会が豊かになって本当に嬉しい限りです。
と、老害じみてきた発言はこのくらいにしておいて……改めて当日ご来場いただいた皆様、そして一緒に演奏してくれた GUT のみんな、さらに演奏会係を引き継いで運営面・演奏面共によく頑張ってくれたドナウの人・ゆーり、ありがとうございました。今後とも GUT の演奏会、博麗幻奏之儀をよろしくお願い致します。