「焼き菓子」についてのあれこれ
或るツイート
今年の秋季例大祭も大盛況でしたが、その裏でこのようなツイートがあったことを読者の皆さんは覚えておいででしょうか。
おいまって
— いるかごはん (@irukagohan0713) 2025年10月20日
目悪すぎて絵柄だけ見てアクスタ買ったらクッキー☆じゃねぇか
おい
は???
自分が最低すぎて泣きそう pic.twitter.com/j87rZczFsg
おいまって
— いるかごはん (@irukagohan0713) 2025年10月20日
目悪すぎて絵柄だけ見てアクスタ買ったらクッキー☆じゃねぇか
おい
は???
自分が最低すぎて泣きそう pic.twitter.com/j87rZczFsg
例大祭にクッキーを持ってくるのはいいとしても、値上げはあり得ないでしょと思いました。
— りむらないヒト (@rimnotte) 2025年10月20日
あと、実際に彼と話した印象ですが、チャラチャラしてて、すごく嫌な感じがしました。値段が高いのもあり、彼は金儲けがしたいのだなと感じました。 pic.twitter.com/fTgNfilwF3
例大祭にクッキーを持ってくるのはいいとしても、値上げはあり得ないでしょと思いました。
— りむらないヒト (@rimnotte) 2025年10月20日
あと、実際に彼と話した印象ですが、チャラチャラしてて、すごく嫌な感じがしました。値段が高いのもあり、彼は金儲けがしたいのだなと感じました。 pic.twitter.com/fTgNfilwF3
「ただの霊夢のアクスタじゃないか。どこに怒る理由がある」「UDKとはなんだ、魔理沙ではないのか」などと思った方は、今まで幸運な人生を生きてきたのだと思います。誇ってください。
ですがこのキャラクターは、博麗霊夢ではありませんし、霧雨魔理沙でもありません。霊夢や魔理沙の皮を被った別のキャラクターとして、とある界隈では認識されています。
今回のテーマはその界隈、東方二次創作が産んだ鬼子にして暗部、クッキー☆についての話です。
クッキー☆とは
まずクッキー☆とは何かについて記します。
事の発端は15年前の2010年2月15日。ニコニコ動画に『【東方合同動画企画】魔理沙とアリスのクッキーKiss』が投稿されました。クオリティはそこまで高いものではなく、そのままなら2010年代のオタクカルチャーのノリを色濃く映した泡沫ボイスドラマとしてネットの海に埋もれていたのでしょうが、演者の演技が棒読み気味であったことから不幸にも淫夢厨に目をつけられてしまい、投稿者側の行動が火に油を注いだこともあり、このボイスドラマを淫夢を絡めて擦るジャンル「クッキー☆」が誕生することとなります。やがてクッキー☆は「クッキー☆内の博麗霊夢」や「クッキー☆内の霧雨魔理沙」をネタにするだけでは飽きたらず、キャラとその演者を同一視し始め、逆に演者をメインのネタにしていきます。これが一見霊夢や魔理沙に見えるキャラクターが「RU姉貴」なり「UDK姉貴」なり呼ばれたり、デザインの違う霊夢や魔理沙が共存したりしている理由です。キャラに「兄貴」や「姉貴」という呼称が付くことから推測できた読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、その通り、クッキー☆はいわゆる「淫夢」と切っても切り離せない関係にあります。それに加えそもそも原作には全く関係のないナマモノをネタにする特性上、クッキー☆はますます東方とはかけ離れたジャンルとなっていきます。そして2012年に幻想万華鏡のアフレコ動画をめぐって生じた東方ファンとの諍いの結果、クッキー☆は東方とは別ジャンルとする解釈が一般的となり、両者の間には一種の相互不可侵のような暗黙の了解が生じました。
クッキー☆は主にニコニコ動画のアングラな部分に根を張ることになりましたが、なりふり構わず有名になりたい者、そのような人間に私利私欲のために近づきたい者、そのような人間たちの起こす騒動や失態を嘲りたい者たちを次々に引き込んで、クッキー☆は主にニコニコのアングラなコミュニティで独自の発展を見せていきます。インターネットの主体が掲示板からSNSへと移行する過渡期にあってそれまでとは比べ物にならないほど爆発的にインターネットを席巻し始めた、ある種の希望を兼ね備えた剥き出しの欲望。クッキー☆は人々のそのような欲望を原動力に発展したと言えるでしょう。それはあまりにもインモラルで、退廃的でさえありましたが、クッキー☆だからこそ生まれたような作品もありました。一種のブラックユーモアとも言えるかもしれません。
爛熟期のクッキー☆界隈の様子は、以下の動画が詳しいです。ろくでもないジャンルにも関わらずクッキー☆と携わってしまう承認欲求の業を上手く描いた名作です。
今クッキー☆を擦るということ
さて、そんな人の心の闇を突いてまさに「悪徳の栄え」とでも言うような繁栄を築いたクッキー☆でしたが、界隈での粘着行為から逃れるために出演者たちがネットから姿を消していったり、派生作品がネタ切れになったりなどして、2020年前後くらいから衰退していきました。かつての繁栄は見る影もなくなっています。
そんな中で私は上に挙げたような投稿をTwitter(現X)で見ることになります。この投稿を見て、私が最初に抱いた感情は疑問でした。「なぜ10年くらい前にではなく今になってクッキー☆を?」という疑問です。クッキー☆界隈の人口は最盛期と比べれば大きく減っています。それでもそれなりの規模はまだあるので、その層にグッズが売れれば良いというのならまだわかります。ただ、「創作が伸びやすい」だの「クッキー☆に出れば有名になれる」だのという旨は完全に的外れと言わざるを得ません。クッキー☆の創作をするとたくさんのクッキー☆界隈民が集まる時代は過ぎ去りましたし、私がこの内容での記事の執筆をやんわり止められたレベルにはクッキー☆は悪名高いです。その悪評を気にせずに新しいクッキー☆系のボイスドラマに出たとしても、あんな小さいコミュニティで有名になったところでたかが知れています。今のクッキー☆界隈に関わったところで、百害あって一利無しなのです。
このような背景があるにも関わらず取られた一見非合理的な行動は、剥き出しの承認欲求やそれを満たすための炎上商法も行われた往年のクッキー☆界隈をある意味で象徴したものと言えるのかもしれません。
まぁ、私は読者の皆さんにはあの界隈に関わるのはお勧めしません。クリエイターの側や演者の側としては、特に。
明日はかんなまさんの記事です!お楽しみに!