二次創作小説のすゝめ
はじめに
皆様こんにちは。学部3年のtaketori98です。
冬の寒さもますます厳しくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
当の私は毎日の通学で自転車を使う生活であり、日々の寒さに心も身体も冷えている次第です。一刻も早く春が来て欲しいところですが、まだまだ冬が続きそうですね……。
さて、この度はご縁がありまして、昨年に引き続きGUTのアドベントカレンダーに参加させていただける運びとなりました。しかもわけあって現時点で2回執筆予定です。今年は人が少ないとはいえ、もう少し色んな人に書いてほしいのですが……。
1日目である今日のテーマは、表題にもあります通り「二次創作小説」の執筆です。
私は前回の合同誌『東大幻想郷弐拾肆』にて『新難題「永遠からの脱出」』を寄稿しました。これは私が生涯で初めて書いた(ちゃんとした)東方二次創作小説です。
この記事では、なぜ私が東方二次創作小説を書くようになったのか、そして東方二次創作小説執筆の魅力などについて語ろうと思います。
きっかけ
私が小説執筆をしようと思ったのは、ほぼ1年前の今日にGUTのアドベントカレンダーに投稿された記事「東方二次創作小説という営み」がきっかけでした。執筆者であるドナウの人はGUTの現B2であり、入学初年次から合同誌に(部分的にでも)小説を寄稿し続けています。等が記事において、彼は次のように述べていました。
> 駒場祭や例大祭で当サークルの合同誌を手に取っていただき、私の名前を見つけられた方はお分かりの通り、私はこのサークルでは主に小説を書いています。少数派、それも合同誌に寄稿しているメンバーの中ではただ一人、です。過去の合同誌を見てみると昔はそれなりにいたようですが、今ではめっきり減ってしまいました。私は事実上、絶滅寸前の (あるいは一度絶滅した?) GUT小説界隈を、一人で背負って立っているわけです。
数年前のGUTの合同誌といえば小説ばかりでした。しかし近年はコロナ禍もあり、自分たちが入る前は合同誌の原稿も薄くなってきていました。自分たちが入ってきた代からはページ数が増えたものの、イラスト、楽譜、随筆などがメインになってきています。そんな中で、B1の春から小説を寄稿するようになったのがドナウの人だったというわけです。
このように憂いている後輩がいるのであれば、応えてあげるのが先輩の役目。加えて、私はあまり絵を描きませんが、小説ならできるかもしれない。そう思って私はここで小説デビューをすることに決めたのです。
これまで執筆してきた小説たち
「新難題『永遠からの脱出』」
とはいいつつも、この記事を読んで直ちに小説を書き始めたわけではありませんでした。このときはテーマすら考えていなかったと思います。
暫くの間小説のことは忘れていたのですが、合同誌の募集が近づくにつれ、何を書こうかなぁと思うようになりました。そうした中、私の創作欲を刺激するような出来事がありました。この話は合同誌『東大幻想郷弐拾肆』の後書きに全て書いていたので、ここで引用することにします。今更種明かしをすると、ここで出てくる知人というのはGUTとは無関係なX(旧Twitter)のFFであり、個人的に少しだけ交流を深めたかったから躍起になっていた、という側面もあったりなかったり……(神の悪戯により徒労になりましたが)。
> そもそもなぜミステリ(風)小説を書こうと思ったのかというと、つい最近ミステリ作品を鑑賞したからにほかなりません。あるとき、私の知人が漫画『Q.E.D. 証明終了』の無料公開を喧伝していたのですが、試しに読んでみたところかなりハマってしまい、あっという間に全巻読み進めてしまいました。久々にミステリ作品を読んだからというのもあって、作中で登場した数々のトリックに心を奪われたのです。この作品には科学技術などが元になったトリックが登場しており、読んでいるうちにそうしたテーマ性のあるミステリ作品を作りたいと思うようになりました。そのとき、私は今回の合同誌で「宇宙」特集をすることを思い出しました。当初、私は別の作品を寄稿することも考えていたのですが、ミステリ作品読み立てホヤホヤの私が考えることはただ一つ。東方で宇宙をテーマにミステリ作品を書こう――私は須臾にしてそう決意したのです。
そんなこんなで3月末くらいから小説執筆を始めたのですが、出来上がったのがなんと20ページ前後の超大作。やはり自分の永夜抄・蓬莱山輝夜・竹取物語への熱意というのは未だ覚めやらぬようで、あっという間に書き上げてしまいました。
原作特有の会話を再現したゆえ、小説というよりSSに近い作品になりましたが、五行説と絡めたり論理パズルを入れたりと、いろいろやりたいことができたんじゃないかなと。ちなみにこの論理パズルは恐らく『Q.E.D. 証明終了』の影響を受けていますね。不思議なくらい全てが綺麗にまとまっており、我ながら会心の出来だと思っています。正直これよりいいミステリ作品はできないかも。バー・オールドアダムの来場者の方からも面白いと好評をいただき、作者冥利に尽きます。
なお、後書きにはおまけの記事(一階述語論理による形式的な証明)があると書きましたが、あれから半年以上が経過した現在できていません。やるやる詐欺をするのが自分の悪いところですね。多分卒業する頃までには(CoqかPrologでの証明もつけて?)Typstで作ると思います。
実を言うと、没にしたテーマとして「地上から見た「月」の変遷―『竹取物語』と『東方永夜抄 ~ Imperishable Night.』を典拠に―」というのがありました。没(というか凍結)にした理由は壮大すぎて書き切れる自信がなかったからです。多分学部在籍中には出せないと思うのですが、気が向いたら出すかもしれません。
「東方祭事務局長の受難(仮)」
(仮)とついている通り、未だ完成していない小説です。
「新難題『永遠からの脱出』」の執筆を終えたのも束の間、早くも次に寄稿する小説の構想を漠然と考えていました。4月のどこかでDiscordに「vol25の小説でも書くかぁ」などと書いたらドナウの人に「先を見据えてらっしゃる」と言われたことを覚えています(が、一定時間後に消える可能性があるTwitterチャンネルに書いたので既に消えています)。
花映塚をやり始めて四季映姫でなにか書きたい、と思ったときに、自身の駒場祭委員としての経験を盛り込んで小説が書けるなぁ……ということでなんと4/11に書き始めました。しかしなんと今日12/4の時点で書き終わっておらず……。
これは途中でネタに詰まったのと、可処分時間が減ったというのがあります。もともとこの小説ではグラフ理論の話を盛り込もうかなと思っており、そこでCops and Robbersを採用しようと思ったのですが……そこで思った以上に難航し、結局没になりました。そうこうしているうちに8月になってしまい、自身の転居と通学時間等の増加(ここらへんは明日の記事で書きます)、および応用情報技術者試験の対策などが重なって後回しになっていったのです。
ひとまず来年の春か秋までには出したいところです。実はまだ序盤しかできておらず(なんとそれだけで7,000字近くあります)、構成とかネタもいろいろ変えていきたいところなので、少々時間はかかりそうですが……。
「地上への羨望」
本来は上記の小説を『東大幻想郷弐拾伍』に寄稿予定だったのですが、明らかに間に合う見込みがなかったので別の小説を急遽作成しました。
東方錦上京のキャラ設定を見たとき、月の重役たちの残酷さに衝撃を受け、輝夜が地上に降り立ったのはそういうところに嫌気が差したからでは……?などと思うようになりました。彼女がそんな雰囲気を察知できたのかはわかりませんが、身近に永琳もいたし不自然すぎるということはないような気がしています。
急いで書いたので口調とかもあまり気にしてないしやや拙い作品だなぁと思ってはいるものの、自分としては珍しく短い文章に収まったので、偶にはこういうのもいいのかな。
「再審」
『東大幻想郷弐拾肆』では自分とドナウの人、そしてSKKの3人が小説を寄稿しました。そんなこんなでGUTに小説文化が戻りつつある中、次の合同誌『東大幻想郷弐拾伍』では企画としてリレー小説をやろう、という話が浮かび上がりました。
実はリレー小説企画は一昔前のGUTの合同誌で実現されたことがあり(何号だったかは次部室にいったときに確認して後日訂正します)、それをもう一回やろうではないか、ということです。ちなみに当該小説は麻雀の話ばかりでなんだこれは?と思ったことを覚えています。
『東大幻想郷弐拾伍』が発行される2025年は東方花映塚20周年の年でもあるので、映姫をテーマに書こうということになりました。そうしてドナウの人、SKK、うーはいうぇい、やっふる、自分、SKK、ドナウの人の順に執筆を行うことになりました。SKKが2回書くことになったのは麻雀によるもの(昨年のnaoppyさんのアドカレの記事「描け麻という文化 ~絵か麻雀が下手なやつこそやれ~」にある通り、GUTには「かけ麻雀」という文化があるのですが、「かけ」をdrawingではなくwritingと解釈する場面があり、それが適用された事例の一つです)、ドナウの人が2回書くことになったのはトップバッターとして締めに責任を追おうという彼の心意気によるものです。
完走した感想ですが(死語)、やはり各々の個性が出て良いですね。文体も話の展開もみんな違って、でもきちんと話が収束していく様が面白いです。ちょっと自分のパートはいろいろ暴走した感がありますが、これもまた一興ということで。機会があればまたやりたいですね。
ちなみに制作秘話なんですが、実は9月はなぜか常に切羽づまっていて、自分のパートは途中からあずさの中で執筆していました(???)
なぜ小説を書くのか
元来私は文章を書くのは好きでした。『東大幻想郷弐拾参』では大学東方との交流に関する記事を寄稿していますし、ものを書くことに抵抗はありませんでした。
では、ここまで小説を書いてきたことがなかったのはなぜか。それは単にやろうとしていなかったからに他なりません。小説を読んだ数も多くはないし、自分が書けるかなぁと思っていたのも大きいです。実を言うと本当に大したことがない小説を書いたことはあった気もしますが、あったとしても本当にその程度でした。
しかし、折角ただで自分の書いた文章を本にできる機会があるのであれば、これを使わないという手はありません。東方共通テストなどいろいろアクロバティックな試みをしてきたのもそれが許される環境であったからです。
こうして振り返ってみると、自分が小説を書きたいという原動力は次のようなものであると考えられます。
- 東方の世界観に沿ったストーリーを自らの手で表現できる
- 自分はあまりイラストを描かないのですが、文章であればそれができるということに魅力を感じました。
- 自らの日々の感情の機微を表現できる
- 元来自分は感情を言語化したい特性があるようで、それが小説に合っていると感じました。
- コッテコテの思想を小説に盛り込むことには賛否両論あるかもしれませんが、少なくとも自分の小説にはその傾向は色濃く反映されていると思います。しばしば文章が長くなるのはそのためです。
- 自身の学業での知見を活かすことができる
- 『Q.E.D. 証明終了』に影響を受けているところがあり、アカデミックな内容を盛り込みたいと思うことがあります。毎回そうできるというわけでもないですが、特に情報科学科で学習した内容は意外とネタにしやすいところもあり、できそうであればなるべく取り入れようかなと思っています。
実を言うと自分は動画という形で二次創作を作成したことがありました(ここでは、というか恐らくどこでも言及しないでしょう)――が、それほど自分には合っていないと感じ、いつの間にか疎遠になっていました。しかし、今のところ小説はそうではないように感じます。ずっと書き続けられるわけではないものの、しばらくは小説という形で創作表現をしていきたいと思っているのです。
一方、小説を書いてみて課題も感じられます。一番は口調でしょうか。やはり東方キャラの口調というのは原作や書籍など断片的なところから得られず、特に原作については真面目に口調に向き合うことも少ないので、インプットが足りないなと感じる次第です。そこまできちんとやる必要は無いと言えば無いのですが、東方共通テストの際に会話文の口調にツッコミを食らったので……。
あとはページ数でしょうか。やはり自分は文章を長くする傾向にあるので、ページ数が肥大化してしまいます。「東方祭事務局長の受難(仮)」については20ページは超えるどころか30ページ台に達してしまう可能性もあり、そうなってくると合同誌の範疇を超えてくるので個人で出せということになってしまいます。しかし個人で出すとしてもそこまで売れることを期待していないし、在庫をどこに置くかも悩ましいし……などと現時点では課題も山積み。某の「要約しろ」という声が聞こえてきますが、短い文章に書きなれる練習もしておきたいところです。
おわりに
アドカレ4日目。急遽ピンチヒッターとして執筆することになりましたが、いかがでしたでしょうか。 絵を描くより断然ハードルは低いと思うので、是非皆様も執筆してみてはいかがでしょうか。
明日も私taketori98の記事です。今度は一年を振り返ろうと思っています。 2日連続となりますがどうかお付き合いいただければと思います。